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Like The Floating Moon pt.2

音楽レビュー、読んだ本、ひとりごと。記事を書く時の「冗長さ」と書かない時の「やる気の無さ」の落差が非常に激しいブログです。

Ornette Coleman - At The Golden Circle, Vol. 1

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ピカソジャクソン・ポロックの絵画は素人目に見るとただの子供のラクガキだったり絵の具を適当にぶちまけたようにしか見えませんが、そういった絵画も今日では「芸術」として確固たる地位を確立しています。また、ケージなどの前衛音楽家はノイズや無音といった「音楽でない」とされていたものの中から「音楽」を見いだしました。そして今日では、EDMのようなノイズ的要素を効果的に用いた音楽が当たり前のようにポップミュージックの中に取り込まれるまでになりました。


当然、適当に思うがままに吹いた口笛や鼻歌も「芸術」としての「音楽」になりうるんじゃないか、という考えも出てきてもおかしくないですね?
僕はこのオーネット・コールマンの「At The Golden Circle, Vol. 1」(1965年)を聴いてると、こういうのがまさにそんな「自由奔放な"鼻歌音楽"」なのでは?と思うわけです。

オーネット・コールマンはフリージャズの元祖的な存在として知られています。フリージャズというとコルトレーンやアイラーやジョン・ゾーンの影響からか、どうしても「暗い」「情念的」「わけがわからない」「うるさい」といったイメージがつきまといがちです。好きな人にはそれを浴びるように聴くのがこれまた気持ちいいと思うんですが、普通の音楽リスナーからすればノイズや現代音楽と並んで取っつきづらい音楽です。

しかし、そのフリージャズの始祖であるオーネットの音楽はというと、ちょっとリズムやハーモニーがズレてる感じがして気持ち悪いですが、まさにそのズレがあるゆえに奇妙な美しさやメロディアスさを持っている音楽だと思います。
「フリージャズってことは、オーネットの音楽は『変態』な音楽?」と聞かれればそれは悩むところ。結構メロディアスで聴きやすい要素が多いですし。
でも本当の変態って、自分のことを「俺はヘンタイだー!!」って自称せず、ごく自然に度肝を抜くようなことしてるものです。そういう意味ならオーネットの音楽はまさに根っから自然体の「変態音楽」だと思います。

そんな彼の音楽性をもっとも分かりやすく体験できる作品が、このストックホルムのライブハウス「ゴールデンサークル」でのライブ盤のVol.1です。
楽器編成はアルトサックス、ドラム、べースだけという最小限のトリオ編成。コードの制約から逃れ、自由自在に口笛のように舞うオーネットのアルトを聴いてると自然と楽しくなってきます。

「Faces and Places」で疾走するリズムセクションにプッシュされてアルトを吹きまくるオーネット。この疾走するスリリング感がたまらない。
「European Echoes」では一変、エコーのようなテーマから展開されていく奇妙なメロディー。サックス一本でエコーの音響のような感じを再現しようとする試みはかなり実験的で面白いです。
極めつけは「Dee Dee」。ファニーなテーマとのびのびとしたソロが聴いててこれまた楽しいですね。
最後の「Dawn」。とてもメロウで、かつダークなメロディーを持つバラード。メロディーを覚えられないのにも関わらず、なぜか「綺麗なメロディーだなぁ」と思ってしまう美しさがあります。

コード的なしがらみが無いのにあまりにも自然。出鱈目に吹いてるようにも聞こえてきますが、「自由自在」「天真爛漫」ではあっても「出鱈目」ではないです。思うがままに出鱈目に吹いたらダラダラになってしまってこんなに楽しく美しいソロは出てこないと思います。

リズムセクション、特にドラムの叩きっぷりも最高ですね。よくここまで自由な音楽にピッタリとついて来られるもんだと思います。

そしてこのジャケット。さすがジャケのセンスも抜群のブルーノート!と言うわけではないですが、真っ白な北欧の雪原に立つ3人の姿がとてもカッコいい。寒い冬に外を歩きながら気軽に聴いてもよし、暖かい部屋の中で酒でも飲みながらじっくりと楽しむもよし、といった感じの音楽です。

あ、あとボーナストラックについている「Doughnuts」が「なんでこれがアウトテイクなの?」と思うくらいに聴きやすくカッコいい演奏です。ところでドーナツの「穴」ってドーナツの一部に入るんですかね?

 

(追記)もう少ししたら2014年の年間ベストまとめ始めようと思います。なかなか決まらない…選ぶ作業が楽しいけどつらいです…

 


Ornette Coleman - Faces And Places - YouTube