読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Like The Floating Moon pt.2

音楽レビュー、読んだ本、ひとりごと。記事を書く時の「冗長さ」と書かない時の「やる気の無さ」の落差が非常に激しいブログです。

hf5を買ってBA型イヤホンすごいって思った話 (運用編)

音質のレビューの次はいよいよ「運用編」です。(メイン内容のレビューが終わったのに『いよいよ』ってなんだ)
hf5を「初めてのBA型イヤホン」として使うにあたり、どういう使い方が合うか、他のシングルBA型と比べてどんな感じか、どういう曲が合うかなどなど、色々試行錯誤しながら試してみたという感じのことを書いていきます。

 なお、この記事は「イントロ編」「レビュー編」の続きになっています。下記のリンクからどうぞ。

svchostexe.hatenablog.com

svchostexe.hatenablog.com

 

<イコライザやイヤーチップなど、細かな調整>

シングルBA型のネックといえばやはり「低音域の不足」です。hf5もやはり「低音不足だからロックやポップスには合わないよ」とたまにレビューとかで言われてます。が、簡単な話、無けりゃ増やせばいいんです。レビュー編でも言ったように、hf5の低域からは「贅肉を削ぎ落したかのような締りのある響き」を感じます。これを生かさない手はありません。

以下は僕のWalkman(F887)上のプレーヤーアプリ、「GoneMad Music Player」上でのイコライザ設定です。

f:id:SvcHostExe:20150713234057p:plain  f:id:SvcHostExe:20150713234308p:plain

64~128Hzあたりを中心に、2.0~3.0dbくらいちょっと持ち上げれば硬質な低音が出てきます。あとはボーカルをはっきり出すために、1kHz~2kHzを2.0dbほど持ち上げ、4khzに凹みをかけ、高音のヌケを良くするために8~16kHzにかけて2.0~3.0dbくらい持ち上げます。仕上げに音割れしないようにプリアンプを-2.0dbくらい下げれば、「For hf5」設定の完成です。

 まあこのEQ設定、言っちゃえばドンシャリ寄りの設定です。ですが、「どちらかと言えば中音域寄りのフラット」な特徴を持つhf5にとっては、この設定が恐ろしく合うように思います。
(4khzあたりを下げるのは、ネットで有名なiTunesのイコライザ設定「Eargasm Explosion」を参考にしてます。「曇った感じの音になる」など賛否はありますが、こうすると中音域と高音域がはっきり分かれ、よりボーカルが引き立つように思います。ただ、ああいう『海外で人気のパーフェクトなEQ設定!』的なのを見るにつけて『あれほど全音域の値を上げまくると、音圧は上がるだろうけど音割れは激しそうだな』とは思いますね…)

このドンシャリ風EQを設定すると、hf5本来の特徴である「音場の狭さ」や「レスポンスの良さ」に加えて、ヌケの良いドラムの響き、締りのある低音などの強調により「キレの良さ」が演出されるため、かなりロック系の音楽に合うイヤホンに化けた感じがします。シングルBAなので確かにちょっと窮屈な感じの響き方ですが、単音でリードを取るギターなどは本当にくっきりと輪郭が浮かび上がってくる感じです。

 

それでもどこか低音域の量が物足りないのならば、いっそ三段フランジを外してShureのソフトフォーム(SEシリーズに標準で付いてるやつ、通称『弾丸』)を付けるのもアリです。人によっては装着感とかも向上するかもしれません。

【国内正規品】SHURE ソフトフォームイヤパッド Mサイズ EABKF1-10M

【国内正規品】SHURE ソフトフォームイヤパッド Mサイズ EABKF1-10M

 

下の写真は実際に僕が使ってるhf5です。「弾丸」をつけるとこんな感じになります。

f:id:SvcHostExe:20150714015416j:plain

低音の響きが増え、中音域のボーカルもはっきり厚みを以って出るようになります。音場も広がり、少しツヤのある感じの響きも出てきて、より「聴きやすい」音色になりました。ただ、高音域のヌケの良さや解像度の高さは若干犠牲になります

装着感も「三段」の時よりは向上した気がします。ただ、長時間の装着はやはりキツいです。「弾丸」にしても耳穴に「三段」の時の痛みとはまた別種の「圧迫感」があります。装着の際もタテ長にフォームチップを潰してから挿入する必要があるため、三段と同じく装着の「慣れ」は必要です。
でも、自分には三段フランジの「耳に刺す」感じからすればまだマシでした。

あと、これも人によりますが、遮音性は三段の時より明らかに向上しています。

「弾丸」をhf5に装着するにあたって、注意しなければならない点がひとつ。
「弾丸」はShureのSEシリーズ用のチップなので、hf5への装着は本来非対応です。現にhf5の本体のステムの直径に対して「弾丸」のステム直径はかなりキツめです。
よって着脱の際には、ほどよい力を加えて抑えながら回転させるなどの細心の注意を払う必要があります。さもないとムリな力が掛かり、本体のステムが折れます。

実際にhead-fiのフォーラムには「弾丸」の着脱時に本体のステムを折ってしまったという報告があります。写真を見てるだけで切なくなります。僕も着脱の時はいつもヒヤヒヤしてます。

 

装着感の良さや互換性を考えて、「弾丸」ではなくコンプライのP型チップを選ぶのもアリかもしれません。

COMPLY (コンプライ) イヤホンチップ Pシリーズ ブラック スタンダード (5ペア)

COMPLY (コンプライ) イヤホンチップ Pシリーズ ブラック スタンダード (5ペア)

 

ですが、個人的に「hf5にコンプライはちょっと…」という感じです。前に一度コンプライのイヤーチップをXB90EXに使ったことがあるんですが、その時はチップの劣化が早く、また高音域もかなり減衰しやすいと感じました。hf5に着けて試着はしていないのでなんとも言えないところもありますが、hf5の長所である「透明感」「ヌケの良さ」がもしかしたら半減してしまうかもしれません。
Shureの「弾丸」は確かに互換性や装着感といった点ではコンプライに劣りますが、耐久性や高音域への強さという点ではコンプライよりも優位にあると思います。「弾丸」ならhf5の良さもあまり殺すこともないだろうと思い使っているわけです。

 

hf5本来の透明感を選んで「三段」か、装着感と音の暖かさを選んで「弾丸」か、はたまた装着感と互換性を考えて「コンプライ」か…。ここらへんの見極めが非常に難しかったです。イヤホンスパイラルならぬ、イヤピスパイラルですね。
おまけにイヤーチップはまとまったパッケージで買うと3000円近くするので、値段もバカになりません。こういう時、eイヤホンでイヤーチップのバラ売りを買ったり購入前に試着できたのは非常にありがたかったです。

 

<シングルBA型の他機種との比較>

他のシングルBA型機種とくらべてコスパは高いのか?という話です。「高音域」の部分で少し他機種との比較をしましたが、実際かなりコスパは高いと思います。ここでは価格帯的にちょっと上のランクのシングルBA機種、X10と比較して試聴したときのおぼろげな記憶を辿ってみます。

[Klipsch] X10 KLRFXA0111 (カナル型イヤホン)

[Klipsch] X10 KLRFXA0111 (カナル型イヤホン)

 

KlipschのX10ですが、かつて「Image X10」という名前で出されてた頃は3万円超の高級機だったらしいです。根強い人気にも関わらず生産終了になっていましたが、最近になって復活。復活後に「X10」と名前を買えてからは随分安くなりました。最安で15000円くらいです。

本体は「にぼし」みたいな形とサイズ。とにかく耳に軽くフィットします。hf5よりは断然装着感の良さは上です。遮音性もhf5に流石に劣るものの、カナル型イヤホンとしては高めだと思います。

音質ですが、解像度はhf5と同じくらいか、ほんの少しだけ下のように思いました。音場はhf5よりも広く、音の響きに「雰囲気」「空気感」が感じられます。

そしてこのX10、BA型にしては珍しく、とにかく低音がたっぷりと響きます。低音といっても重低音とかドスドス響く感じではなく、あくまで「ゆったり」と響く感じ。タイプはかなり違いますが、この点は若干僕の使っているIE60にも似てますね。
この低音の響きを「雰囲気の良さ」と捉えるか「BA型のくせにベールがかかったようだ」と感じるかは人それぞれだと思います。あくまで個人的な感想ですが、僕はhf5のスッキリした感じの音と聴き比べて、「hf5よりはちょっと篭ってるかもしれない」と思いました。高音域の伸びや透明感も、BAの他機種に比べると少し物足らないかもしれません。

ただこのX10、「雰囲気の良さ」や「バランス感覚の良さ」といった点は本当に優秀ですね。シングルBAなので音も散ることなく、雰囲気やツヤの良さとクリアに鳴る解像度の良さが両立している感じがします。
ジャズや少し古めのロックなんか聴くとすごくしっくり来そうです。装着感の良さやデザイン性の高さもあり、流石に人気機種なだけはあるなぁと思います。

比較した結論ですが、hf5は、5000円上のX10とくらべても同等クラスだと思います。シングルBA特有のスッキリした音色の透明感や解像度感を選ぶならhf5、装着感重視でより柔らかな音色を楽しみたいならX10、といった感じでしょうか。
X10も欲しくなってきました…

 

<どんな曲を聞くか>

現在、僕は先に説明したような「ドンシャリ風」イコライザを設定して「弾丸」をイヤーピースとして装着した状態でhf5を常用しています。最後に、この状態で使ってみて、個人的にどういうタイプのジャンルに向いているかなど、少し紹介していきます。

まず、ロック。hf5は冷たくあっさりとした感じの音色なので、60~80年代の古めのハードロック、ドロドロとしたサイケやドゥームメタルなどにはあまり合いません。

しかし、カチッとしてキレやスピード感のある音になるととてもよく合います。スピード感重視ならスラッシュメタルやハードコア、音のキレ重視ならポストハードコアやインスト系ポストロックTortoiseとかtoeとかjizueとかあの辺)などがぴったりです。
つまり、「録音がクリア」、「楽器編成がシンプル」、「楽器隊がよく動きキレがある」といった音源ほどhf5に合うかも、という感じでしょうか。

このような曲の好例がthe band apartの「ノード」。最近のバンアパはポストハードコアっぽいアグレッシブさが目立ってきている気がします。個人的になかなか好みです。
イントロのユニゾンの「バシッ!!」と鳴る部分の残響や鋭さには思わず「おおっ!」となります。スピード感やキレ味もIE60に比べるとより生々しく表現できています。

 「キレ味のあるロック」ということでもうひとつ。アニソンですが、新谷良子のソロアルバム(特に4th『Wonderful World』など)なんかhf5で聞くともう最高です。

エモ風味で切れ味抜群のロックバンドの演奏をバックに、伸び伸びとした彼女のボーカルが歌いまくります。「硬質なロック」+「伸びのある女性ボーカル」と、まさにhf5の独壇場なわけで、相性が悪いはずがありません。録音の生々しいライブ感も◎。

  次はジャズです。トランペットやサックスなどの管楽器の響きをhf5で聴くと、明るくハッキリした音色だなとは思います。ただ、ロックと同じく古めの音源(50~60年代のハードバップ、モードジャズなど)は、やはり響きの「雰囲気」が出ないので不得意かもしれません。
でも、冷たい響きのECM系や現代ジャズ、ピアノトリオやフュージョンプログレ寄りのジャズロック系などになると、hf5のスッキリした響き滑らかな鳴らし方にかなりぴったりと合います。例えば、Keith Jarretのピアノソロや上原ひろみの演奏なんかには凄く合いますね。

下に貼った動画はスウェーデンのピアノトリオ、Esbjorn Svesson Trio (E.S.T.)のライブ映像。キレ味のある現代的な演奏がhf5にぴったりです。

ジャズとくれば次はクラシック…と行きたい所ですが、僕はクラシックは疎いので…なんとも言えません。音場が狭いので、大編成のフルオーケストラよりも、こぢんまりした編成の室内楽やピアノソロの方が合うかもしれないとは思います。
これは厳密にはクラシックじゃないかもですが、Brian Enoのアルバム「Discreet Music」に「パッヘルベルのカノン」をドローンっぽくアレンジした変奏曲が入ってたので紹介しときます。一つ一つの音をしっかりと追えるので、こういったミニマムとかアンビエントなんかもhf5によく合いますね。

 主に「キレ」のあるクールな質感の音楽を多く紹介しましたが、hf5の得意技はなんといってもボーカル、特に女性ボーカルです。hf5を買ってから今までよりさらに女性ボーカルを聴くようになった気がします。
フュージョンやシティポップの要素があるものが特に好きです。土岐麻子や初期のユーミン、ジャズ時代のJoni Mitchellなどは本当によく合います。フュージョン系の流れるようなバッキングも滑らかに鳴らしてくれますね。また、ER-4系ほど極端な「解像度感」がないのも、音のやわらかさ、聴きやすさに繋がっているのかもしれません。

 土岐麻子で思い出したんですが、彼女が歌ったバージョンが原曲だったRhodanthe*の「Your Voice」も上げときます。(結局アニソンですね)
この曲をhf5で聞くと、ホーンの響きの良さ、複数人の女性ボーカルの描き分け、伸び伸びと響くバイオリンのヌケの良い響きなどが目立ちます。高~中音域のヌケがよくクリアな鳴らし方をするので、ビッグバンドで派手なホーンセクションを鳴らしたりすると、これがまたすごく合うんです。
解像度の高さもあり、ビックバンドでは埋もれがちな、鉄琴の音やギターのバッキングもしっかりと追える程度に聞けますね。ウッドベースはスウィングするにはちょっと鳴らし方が固い気もしますが、ボワつくこともないのでまあ次第点でしょう。
トゥッティの部分はダイナミックに盛り上がる感じの鳴らし方とまでは言えないものの、音を濁らせること無く、淡々と、けれどもしっかりとそれぞれの楽器の音色を分けて鳴らしてくれる感じがします。Chicagoとかのブラスロックにも合いそうですね。

 

<おわりに>

最近はもっぱらメインのIE60はたまに使う程度です。スッキリした音の出し方が好きになり、基本的にhf5を使ってます。
サブとして使おうと安めのイヤホンを買ったはずなのに、まさか8000円近く高いIE60の出番を奪いつつあるなんて…まさに予想外でした。恐るべしhf5。恐るべしBA型。
IE60も「音の演出」という点では良いイヤホンなので、うまく使い分けしていきたいですね。

そういえば、さっき音屋を見たらER-4Pが25000円くらいまで値下がりしてるみたいです…あれ、これもしかして頑張ったら買えるんじゃね?…物欲がまた…
hf5もIE60も素晴らしいイヤホンというのは分かるんですが、やはり上を見ればキリがないです。どちらもケチって中途半端に普及版の機種を買っちゃったのが幸い中の不幸(?)だったのでしょうか。僕のヘッドホン、イヤホンのスパイラルはまだまだ続くと思います。

(IM02もX10も気になるし、ハイブリッド型ならDN-2000も欲しい、ヘッドホンならHD25のAmperiorもずっと欲しかったし、ヘッドホンアンプもいいやつに買い換えたい……)

 

レビュー対象に思い入れが強すぎたあまり、力が入りすぎてものすごい長さの記事になりました。非常に長かったですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。おしまい!

 

全く関係無いですが、今夜はゴキブリをベッド下に逃したみたいなので眠れそうにありません。ベッドに上がってきたらと思うともう…途方に暮れてます。
(※上は7月14日深夜の話。その後すぐに某黒いキャップやら某ホイホイなどを設置しました。記事を分割・修正した17日夜現在ですが、それ以来姿を見ていません。やったね!)

 

【国内正規品】 Etymotic Research インイヤーイヤホン HF5-BLACK

【国内正規品】 Etymotic Research インイヤーイヤホン HF5-BLACK