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Like The Floating Moon pt.2

音楽レビュー、読んだ本、ひとりごと。記事を書く時の「冗長さ」と書かない時の「やる気の無さ」の落差が非常に激しいブログです。

hf5を買ってBA型イヤホンすごいって思った話 (レビュー編)

 さて、やけに長い前置きもありましたが(『イントロ編』の記事参照)、肝心のhf5のレビューです。
オーディオに関しては2万円以上のヘッドホンやイヤホンを使ったことがなく、かつこの分野に関してはボキャ貧気味なので頓珍漢なことを言ってるかもしれません。まあそこは多目に見てもらえたらと…

この記事は「イントロ編」のつづきです。前置き部分は下記のリンクからどうぞ。

svchostexe.hatenablog.com

 

  <装着感と取り回し>

まず、装着感とか取り回しについて。ER-4シリーズと同じく、この点ははっきり言ってそのままではかなり悪いように感じます。

コードの強度は比較的強そうですが、ポータブル用途の製品なのに長さが1.7mもあるのでちょっと不便です。歩行時に使うとなると、クリップを使ってシャツなどに固定しないとタッチノイズが酷いし、なにより遮音性が高すぎるので周りに細心の注意を払わないと危険です。

最大の難関はやはり三段フランジの装着でしょう。「慣れ」「訓練」が必要です。しっかりと外耳道の向きを意識して入れないと耳穴に痛みが走り、逆に奥に入れすぎても低音や響きが犠牲になり、窮屈な感じの音になってしまいます。
ようやく上手く装着できるようになっても、耳穴の奥に「刺す」ようにして入れるので、どうしても耳穴に違和感を感じてしまいます。
僕は三段フランジにあまり馴染めず、ShureのSEシリーズ用のフォームチップを使ってます。装着感は三段より多少マシになりますが、やはりフォームチップを奥に刺すとなると「圧迫感」が出てきます。

重さは軽量、音色もフラットなシングルBAなので「気軽に聴けるサウンド」かと思いきや、やはり長時間の装着は厳しいようです。ここがエティモのイヤホンの難しさでしょう。

 

  <全体の音質(IE60と比べて)>

次に肝心の音質。この値段のシングルBAでこの音はかなり凄いと思います。

第一印象は、「スッキリしていて素直な音だけど、どうも迫力や雰囲気に欠ける気がする」という感じでした。店舗で視聴したER-4シリーズに比べると、やはりあれほど圧倒的なキラキラした高音や圧倒的な解像度感はありません。また、ER-4より低音の量が出てるとは言われますが、IE60に比べると流石にちょっと量が足りないかも。音場の広さもどうしても狭く感じます。

 しかし、それはメインで使用している「ダイナミック型」のIE60と比べた話。

IE60は高音域、中音域にアクセントを立て、低音の響きと音場を広げて「自然でゆったりした音色」を「演出する」タイプのイヤホンだと思います。まさにダイナミック型のチューニング。この価格帯にしてはかなりバランスのいい音です。

しかし、イコライザーの調節を思い浮かべれば分かりやすいですが、「演出する」ことは余計な音や響きを「切り捨てる」という犠牲を伴うわけです。このため、他の2万円付近のイヤホンと聴き比べると解像度や遮音性は少し落ちる気がします。良くも悪くも「雰囲気で音が『散っていく』」感じです。
「自然でゆったりとした音色」もジャズや60~70年代ロックにはドンピシャなんですが、スピード感やキレを要求するスラッシュメタルやテクデスやハードコアなどでは「響きがちょっとモタり気味かもな」と思う時もあります。

 対してhf5。低音域はちょっと控えめですが、その分中高音の響きはハッキリしています。さらに音場を近くして音を「散らない」ようになっているためでしょうか、解像度はIE60よりも高く、一つ一つの音がはっきりと掴めます。
IE60のような重厚で空気感のある雰囲気作りとは真逆ですが、「自然でクリアな音色」を目指したという感じです。

「自然な音色」を目指すという方向性は両機種とも似ているように思いますが、肝心の方法論が真逆なわけです。どちらが好みかにもよりますが、「素直な音色」という点ではhf5に軍配が上がると僕は思います。

また、音の鳴らし方が「素直」な分、音源に対するレスポンスはかなり高いです。スネアのヌケなんかは非常に良く、「タンッ!」と鋭く短く響きます。IE60のような「きらびやかだけどゆったりした感じ」とは真逆です。

 

 <中音域>

hf5で特筆すべきはやはり「中高音の響き」でしょう。IE60もボーカルやシンバルのハリやツヤが「演出」されていていいイヤホンだなと思います。それに対して、hf5は本当に「素直」に音を奏でてくれるなー、という印象です。

例えば中音域の「厚み」に着目してみます。ここでは例としてNorah Jones「Don't Know Why」のボーカルで聴き比べてみます。

IE60ではボーカルの「ツヤ」を重視するという「雰囲気作り」に徹しているように聞こえます。高音域のエッジ(?)が立っている感じ。Norah Jonesのボーカルはハスキーな響きが特徴的なんですが、エッジを演出したぶん、「ハスキー」を通り越してちょっと「カサカサ」な響きにも聞こえてきます。

hf5ではIE60のような高音域の「ツヤ」は演出されていません。その分彼女のボーカルがより前面に、より自然に出ています。IE60と比べるとより中音域寄りな響きで、ボーカルもほどよくハスキーな質感で、「厚み」を感じます。音が散らないためか、ブレスやリップノイズもより鮮明に出てきますね。また、ボーカルではないですが、ピアノの響きにも「全部の響きを出しきった」かのような「厚み」があります。

 

 <高音域>

そして高音域の響き。hf5はさすがエティモのイヤホンだけあってここは優秀です。

僕が今までなかなかBA型に手を出せなかった理由に、ひとつには低音域の量や音場の広さに物足りなさを感じていたというのもありますが、やはり前置きの部分でも述べたような「篭った感じ」が一番のネックだったわけです。
具体的には、ダイナミック型はクラッシュシンバルの響きなどを「シャーン…!」と伸びきらせるのに対して、BA型は「シーン!」となってしまい最高域の「伸びきり」が足りない感じがする、またはアコギの高音域のエッジがばっさり切られていたり…といった感じ。このBA型特有の「音域のレンジが狭く、高音域がバッサリ切られちゃう感じ」にどうしても僕は馴染めなかったわけです。

hf5にしても、IE60やER-4Pに比べると、確かにこういった高域の響きが「伸びきる」感じはまだまだ足りません。(ダイナミック型のIE60はともかく、ER-4系はここが飛び抜けて凄いですし…)

しかし、鳴らし方が巧いのか、hf5はBA型の中ではかなりヌケが良い高音域を出していると思います。
中音域重視のShureのミドルレンジ(315や425あたり)との比較は言うにおよばず、同価格帯のシングルBAであるheaven IVやX10と比べても、高音域の「透明感」「ヌケの良さ」という点ではhf5の方が明らかに感じられるように思います。

音の印象としては、僕が最初に目をつけていたIM02の明るい高音域の出し方に少し似ています。
IM02と違うのは音色のバランスです。IM02は元気で派手目な音を出してくれますが、その分少し高音が刺さるように感じるところもありました。hf5はその点ちょうどいい自然なバランスで鳴っているようで、中音域も程よい厚さをキープしてます。むろん、どちらも篭った感じは皆無です。

 

ただ、鳴らし方が絶妙とはいえ、高域が「伸びきっていない」ことは変わりありません。たとえば、繊細な超高音域の再生を要求する「ハイレゾ音源の再生」なんかにはあまり向かないと思います。
僕は殆どMP3(320kbps VBR)でCD音源を取り込んでいるので、ハイレゾという点では今のところ不便はありません。でも今使っているWalkmanもUSB-DACも一応ハイレゾには対応してるみたいですし、微妙には気になってます。…まぁ、ハイレゾに手を出すとすればその時はまた考えるとします。

(イヤホンのレビュー記事でこう言ってはアレですが、僕の耳はFLACとMP3 320kpbs(VBR)の違いが分からなかったくらいです。レンタルほど安く音源が手に入らないのなら、CDも「実物で」欲しいというアナクロ人間です。プレーヤーの64GBのストレージはいつもカツカツ、常に厳選と入れ替えの繰り返しです。そんな自分がわざわざ高いお金出して、「高い値段で」「データだけ」のハイレゾ音源を買う、というのはあまり考えられないんですが…)

 

 <低音域>

そして、問題の低音域です。hf5含めたシングルBAは、特にこの低音の量の不足が欠点と思われがちです。しかし、ロックやジャズを中心に聞く僕としては、この低音域がある意味「要」なわけです。

「ロックに合う」とされているXB90EXやSE215SPEなどに比べると、hf5は確かに「低音の迫力」がありません。IE60のような「包み込むような低音」もありません。
しかし、低音自体は出る所でしっかりカッチリと出ています。よく言う「締りのある低音」というやつですね。贅肉をそぎ落とした感じの響きがかなり好みです。

驚いたのが、Bill Evans Trioの名ライブ盤「Waltz for Debby」にて僅かな音量で録音されている極小の低音「地下鉄の走行音」を聞き取れた、ということです。詳しくはこのページとかに詳しいんですが、ここではその中でも一番聞き取りやすいとされる「Some Other Time」の00:14~00:19あたりに耳をすましてみます。

今まではIE60でもXB90EXでも聞き取れず、モニターヘッドホンのATH-M50をPCのヘッドホンアンプに繋いでもまだ聞き取れませんでした。まあmp3(320kbps VBR)で取り込んだ音源を実験の対象にしてたので、聞こえなくて当然か…と諦めかけてたわけです。

しかしhf5で聴くと、右側からかすかにですが「ボゴゴゴ…」という音を聞き取ることが出来ました。低音の量自体は少ないものの、遮音性や解像度の高さのおかげで、よりくっきりと低音の輪郭を出せているのだと思います。
重低音重視などとは真逆のアプローチで鳴らすイヤホンなので、あまり期待はしていませんでしたが、それだけに聞き取れた時は驚きました。すごいポテンシャルです。

 

音質面のレビューはおしまいです。次は実際に色々な音源を聴いたり自分好みにカスタマイズしてみたりします。というわけで「運用編」につづく。続きは下記のリンクからどうぞ。

svchostexe.hatenablog.com