Like The Floating Moon pt.2

音楽レビュー、読んだ本、ひとりごと。記事を書く時の「冗長さ」と書かない時の「やる気の無さ」の落差が非常に激しいブログです。

2014年ベストアルバム

(YouTubeの埋め込みが15もあります。ページが凄く重いですがご了承ください。)

さてさて、今年のベストです。日付を見ればおわかりかと思いますが、かなりギリギリまで迷いました。その挙げ句トップ10ではなくなぜかトップ15での発表です。全体的にプログレ、メタル、インディー、ポスト系などなど、浅く狭くですがいろいろ聞けたかなと思います。

ギリギリで書き上げたので文章が整ってなかったり汚いところもありますがお許しください。それではどうぞ。(レビュー、コメントは10位以降) 
 
15位 Fallujah - The Fresh Prevails
14位 Mastodon - Once More 'Round The Sun
13位 Sunn O))) & Ulver - Terrestrials
12位 石橋英子 - car and freezer
11位 Anathema - Distant Satellites


Anathema - The Lost Song part 3 (FULL TRACK ...

 

ここからトップ10です。長いくせに適当なレビュー付きですがどうぞ。

 

10位 森は生きている - グッド・ナイト
フォークやサイケやシティポップを基本としながらも、ツェッペリンのようなハードロックやファズギターを中心にした60年代サイケみたいな音楽が出てきたり、後ろでは微かにフリーキーなサックスが聞こえてきたり、はたまた無国籍な民族音楽感があったりと、多様な音楽要素がごった煮になっているプログレッシブなアルバムです。転調の仕方や空間的表現がカンタベリー系やアンビエントを感じさせる場面もあり、Robert Wyattの作品に近い質感もあります。しかし根底にあるのはやはりはっぴいえんどなどの日本のシティポップとだけあって、親しみやすい歌メロが全編にあるのは嬉しいところ。
聴いてると「この人たちっていろんな音楽が大好きな"音楽オタク"なんだなぁ」と実感してくる作品でした。17分に及ぶ組曲「煙夜の夢」も収録。
 
9位 Electric Wizard - Time To Die
これぞElectirc Wizardとも言うべき、ひたすらにドゥーム!ストーナーサイケデリック!といった路線の作品。
前作「Black Mass」のポップな方向性を部分的に取り入れながらも、今作品では元来のドゥームメタル路線に回帰しました。
Come My FanaticsやDopethroneなど、「頭おかしい…」と言えるほどにstonedした傑作に比べると流石に「凄み」が足りない感がありますが、やはり彼ら独特の悪魔的ヘヴィネスは健在。ヘヴィなだけではなく、リフを繰り返すことで生まれるサイケデリックな酩酊感やブルージーなソロなど、味わい深い「コク」もあります。曲名も物騒極まりないですw
 
8位 花澤香奈 - 25
人気声優、花澤香奈の2ndアルバムです。1st「claire」では渋谷系リバイバルという趣の作品で、個人的にそのめくるめく世界観からビートルズの「Sgt. Pepper's~」あたりを想像した作品でした。
で、今作は2枚組だからって「ホワイトアルバム」あたりを想像したんじゃないかって?………我ながら安直すぎますが大当たりです。
前作みたいな渋谷系な上質なキラキラポップスはもちろん、オーケストラヒットが響く80年代エレポップ風な曲、エレピの舞うさわやかシティポップな曲もあれば、ギターを掻きならし疾走するガールズパンクみたいな曲もあったりと、とにかく曲の幅が広いです。また、今回は前回に比べてバンドサウンドが重視されているのも特徴でしょう。
25曲という曲の多さもあり、通して聞くと少々散漫な印象も残ります(だからちょっと順位も低め)。でも、一曲一曲の質はもちろん高く、彼女のキュートなボーカルもますます引き立っていて◎。ちなみに個人的に今年のベストチューンはこのアルバムに収録の「Summer Sunset」です。
 
7位 Cynic - Kindly Bent To Free Us
現在のProgressive Metalというジャンルの隆盛の先駆けを築いたCynicも、気づけばもうこんなに遠いところに来てしまいました。フルアルバムでは「Traced In Air」以来、実に6年ぶりとなった3rdアルバム。このバンド独特の「統一されたトランス感」のカラーは今作品ではほとんど見られません。代わりにオルタナやブルース、最近のプログレメタルの流れなどを取り入れ、より実験的で混沌としたムードになっています。
今までの2枚があまりにも傑作すぎたのもあってか、2、3回聴いただけではピンと来ない部分もありましたが、聴けば聴くほど味が出てきます。「Infinite Shape」の不思議なギターフレーズを聴くと、「やっぱりこういうのはCynicにしかできないなぁ」と感じる次第。
 
6位 Alcest - Shelter
Cynicに続き、こちらも遂に完全に「脱メタル」を果たしたシューゲイザー(・ブラックメタル)、Alcestの4thアルバムです。今回は1st以来の完全クリーンボーカルなアルバムですが、1stで顕著だったメタル的な激情を感じさせる静寂感(オーガニックなフォーク感、むき出しのトレモロギターなど)はここには殆どありません。代わりに、ここ数作で特に顕著だった空間的なポストロック感が更に出てきています。メロディーはもはやドリームポップな感じで、いわゆる「ポストブラックメタル」の域を軽々と飛び越えてしまってます。透明で夢見心地なメロディーとさざ波のように柔らかなギターがいつまでも聞いていたいくらい最高です。
Vampilliaと対バンした春のライブも最高でした!
 
5位 Boris - Noise
ドゥーム、エクスペリメンタル、ポップ、ドローン、アンビエントなど、多様な音楽を股に掛けるBorisのキャリアを総括したといった趣の今作。キャリアの到達点とまではいえないまでも、「これがBorisだ!」と言える感じに上手く纏められている内容だと思います。
もともと重々しい音の中にもJ-POP的なポップセンスがあるバンドだと思っていましたが、このアルバムではJ-POP的な前作の流れを汲みながらもバンドサウンドによる重さ・深さが復活しています。
特に「雨」~「Quicksilver」の流れが素晴らしい。「雨」での土砂降りの雨のような重々しいドゥーム、フットワークの軽さを感じさせるローファイでポップな「太陽のバカ」、「Angel」での18分に及ぶ光が射し込むような感動的なドローン、そしてBorisのルーツを感じさせる爆走ハードコアチューンの「Quicksilver」。幅広い音楽をポップかつプログレッシブに纏めあげる手腕はBorisならではと言うべきものです。
 
4位 Flying Lotus - You're Dead!
第4位は現代エクスペリメンタルミュージックの雄、Flying Lotusの「You're Dead!」。ジャケもタイトルも衝撃的でセンセーショナルです。
スピリチュアルなジャケ絵の感じがどこか70年代のMiles Davisのアルバム(「Aghartra」とか「Bitches Brew」あたり)に雰囲気が似てるなぁと思っていましたが、内容もフュージョン黎明期のあの熱さを感じさせるホットなアルバムですね。打ち込みビート中心だった今までとは違い、今作品は生演奏主体ですが、とにかくJohn McLaughlinのようなギターと手数の多いドラムが凄いです。
「Cold Dead」の冒頭のギターなんてモロにマハヴィシュヌオーケストラっぽいし、「Descent Into Madness」の不思議な歌メロはカンタベリー系みたいな感じ。なんでもアリな70年代初期のロックやジャズの雰囲気を(先進性も併せて)現代的にアップデートした感覚で味わえます。プログレ耳でも十分に楽しめるアルバムです。
 
3位 ORGE YOU ASSHOLE - ペーパークラフト
くわしくは下記の過去レビューで。


OGRE YOU ASSHOLE - ペーパークラフト - Like The Floating Moon pt.2

 
2位 Mats/Morgan - Schack Tati
第2位はスウェーデンの変態プログレフュージョン、Mats/Morganの5年ぶりのアルバム。恥ずかしながら僕は名前だけは所々で聞いていながらも今まで殆ど聞けていませんでした。が、このアルバムを聞いて「なんで早く聞いてなかったんだろう…」と嬉しいような悲しいような後悔を感じています。
全編に渡って「これが"変態プログレ"?」と思うほどにとにかくダンサブルでポップな曲が続きます。でもやっぱりぶっ飛んだ楽器の使い方だったりヘンテコなメロディーセンスが押さえられずあふれ出てきていますね。ジャズ的な感覚とエレクトロニカを融合させたエクスペリメンタルミュージック、といった点ではSquarepusherFlying Lotusあたりのファンにもおすすめです。聞いててとにかく楽しくぶっ飛べるアルバム。
 
1位 スカート - サイダーの庭
第1位は東京のバンド、スカートの「サイダーの庭」です。収録時間は30分ほどとEP並に短いですが、内容は恐ろしく濃いポップアルバムです。
過去作品の「ストーリー」を聞いた時には、宅録風味の生々しい感じの録音、ヘタウマだけどそれゆえにソウルフルなボーカルなど、身近なインディー感を醸し出しだすアーティストといった感じの印象でしたかが、このアルバムではスピッツ山下達郎あたりにも通じるほどの爽やかなポップネスやソウルフルな感じも備わり、どこかメジャーな貫禄さえ感じるまでになりました。しかし洗練されたといっても、XTCあたりにも通じる彼独特のひねくれたポップ感覚もそこかしこに見え隠れしています。
個人的には「都市の呪文」のセンス抜群のグルーヴ感、「古い写真」での初期ユーミンもかくやと言わんばかりの影のある寂しさ、そして「すみか」でのメジャー感ど真ん中のポップさがツボです。全曲捨て曲なし。何回でも聞きたい!
 
 
めちゃくちゃ長かったですが以上です。
今年もお金がなく、Pineapple TheifやSoenやPain Of Salvation、それにPink FloydAphex Twinあたりと、買えなかったアルバムも多くあり未練タラタラですがとりあえずまとめることができました。
来年もよろしくおねがいします。